高次脳機能障害で障害年金が受け取れる場合

文責:所長 弁護士・社会保険労務士 伊藤貴陽

最終更新日:2024年09月30日

1 高次脳機能障害と障害年金

 高次脳機能障害というのは、頭部外傷等をきっかけに脳が損傷することによって生じる障害を広く指す場合があります。

 学術的には記憶、感情等の障害を示すものとして使われることもあるようですが、脳が損傷することにより、視野の狭窄や四肢の麻痺等、身体的な障害として発現することもあります。

 障害年金の認定基準は、傷病名に対して等ではなく、主に現在の状態に対して定められた基準と評価でき、発現している障害に応じて、高次脳機能障害の場合の障害年金受給が決まってくるものとなります。

2 前提要件

 障害年金の受給については、基本的に申請傷病に関して最初に通院した日(初診日)が特定されていなければならないものとされています。

 この点、高次脳機能障害の場合、頭部外傷を伴う交通事故や、脳卒中等から突然自宅で倒れて救急搬送される、といったはっきりとしたきっかけで通院が開始されることが多く、初診日は比較的明確であることが多いといえます。

 そのため、初診日が特定できないという問題が生じるケースは少ないです。

 次に、障害年金の受給は基本的に保険料が一定以上未納となっていないことも求められています。

 長期間未納の状態で初診となった場合、どんなに重篤な症状が残存したとしても障害年金の受給は認められないことになりますので、事前に確認されるとよいと思います。

3 障害状態

 上記のとおり、障害年金の認定にあたっては、高次脳機能障害という診断それ自体というよりも、残存する症状に応じた等級認定が行われることが1つのポイントといえるかと思います。

 脳卒中による後遺症の場合、視力が下がったり視野が狭くなったりしているということであれば眼の障害としての審査となってきますし、四肢の麻痺ということであれば肢体の障害として審査されることになります。

 これに対して、相対的なお話となりますが、高次脳機能障害の症状である記憶障害や感情障害等は、障害の程度の評価が難しいといえます。

 「以前と比べて怒りっぽくなった」等という感情障害としての症状が発現していたとしても、「以前と比べて」の部分は担当医師でも判断がつかないものです。

 「物忘れが多くなった」等という症状についても、日常生活状況の中でとのような影響を与えているのかの評価も難しいといえます。

 感情等にかかわる症状についての申請にあたっては、ご家族等周囲の方のご協力も、手続を進めるにあたって重要になってくるといえます。

 以上のとおり、高次脳機能障害については様々な症状が発現する可能性がありますが、障害認定基準に照らし、一定以上の障害の状態にあるものと認められれば、障害年金の受給が認められることになります。

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